うさ子戦隊エリザベス

 

ストーリー

第23話「きっと伝わる」

エリザベスは、もはやグリーンの回復も追いつかないほど、攻撃を受けていた。エネルギー切れなんて来ないんじゃないかとすら思った。それぐらい、幕は丈夫であり、光線はやまなかった。かつて使った合体技が使えれば良いのだが、疲弊した今、威力の出ないであろう技で体力を消耗したくなかった。レッドがイエローに、しばらく4人をかくまうよう頼んだ。後ろでパワーを溜め、全力で幕を斬り、幕が落ちたところへ魔法弾を放ち、総帥を殴ってやろうじゃないかと言うのだ。幕を斬れるかどうかはわからないが、これが最後の手段になりそうだと、5人は顔を見合わせてうなずいた。

盾を構えるイエロー。その真後ろで盾を補修するグリーン。パワーを溜める3人。総帥を倒し、無事に地球に帰るのだと、何度も自分に言い聞かせていた。
やがて、イエローとグリーンに限界が訪れようとしていた。レッドは幕を斬りつけようと飛び上がった、しかし、光線が直撃してしまう。近づくことすらできないのかと走り出すブルーだが、あっさりと幕の前までたどり着く、しかし、幕には触れることすらできない。遊ばれているのだ。力に差がありすぎる。ピンクは攻撃しようとすら思えなかった。
通信がつながったままだったネイブルが言う。エリザベスのパワーは負のエネルギーとは違った、おそらく、楽観的であったりする、いわばプラスのエネルギーだろうと。それは地球人にもあるし、力になるのだが、不安定でもある。攻撃的な感情がマイナスに寄ってしまうからだ。しかし、シルバーたちは違う。彼らは先天的に自由きままであり、攻撃を好まないのだ。今までのシルバーの行動を思い起こしてみても納得がいく。だから、今はなんとか耐え、シルバーたちが到着するのを待ってみてほしいと。
しかし、気絶していたはずのレッドが、ネイブルの言葉は信用できないとさえぎった。何故ネイブルがエリザベスを助けようとするのかが理解できないのだ。ヴァイオレットとワイティを助けたいからだと答えるネイブルだったが、どうしてもレッドは納得できなかった。言葉を返せないネイブルに代わり、ヴァイオレットが叫んだ。ネイブルがレッドのことを子どもの頃から好いており、マスターを通じて話を聞いたりしていたことを。好きな人を助けたいのは当然のことだと泣きながら叫ぶヴァイオレットだったが、レッドは一方的に通信を切り、通信機を壊してしまった。心配そうに見つめるピンクに気づくと、レッドはそっぽを向いてしまった。照れているのだと気づいたピンクは自分の通信機でヴァイオレットに大丈夫だと伝え、レッドに素直になりなよと笑って言うのだった。
通信中、光線はおろか言葉さえ発しなかった幕の奥から、唸り声が聞こえてきた。理解ができないと言う総帥に対し、グリーンに肩を貸すピンクが、恋心っていうのはプラスとかマイナスとかじゃ説明できないんだと笑ってみせた。イエローに肩を貸しながらも、話があまり理解できていないブルーを見てイエローが、家族愛だって一直線というわけにはいかないだろう、と補足したのだった。

幕が揺れた。なぜこんな状況で笑っていられるのかと総帥が問う。ラピーヌの住人が、捕虜となり自由を失いながらも、なんとかなるかと笑っていたのも理解ができなかったという。やがて軍団はエネルギーが増やせなくなり、ふたたび基地を移動することもできなくなったため、ここを本拠地に構え、他の星を侵略しようとしていたのだった。
何度も問う総帥に、信じていたからだと答えるものがあった。シルバー、ワイティ、オレンジの3人が部屋にたどり着いていたのだ。
さらに幕が揺れた。3人に気圧(けお)されているのだろう。そういえば、軍団といいながらも戦闘員はエネルギー体であった。博士は例外としても、もしかしたら、総帥は。
今だ、と、誰ともなしに叫んでいた。レッドが幕を斬り落とし、ピンクが総帥に魔法弾を放ち、ブルーが拳を握り締めた。総帥は、闇の塊とでも呼べそうな形をしていた。飛びかかりはしたものの、ブルーは殴ろうとはしなかった。総帥を掴み、仲間たちを呼ぶ。そして、総帥を囲んで輪になった。
暴れ、叫び、逃げ出そうとする総帥だったが、彼にとって理解のできないエネルギーに相殺され、いつしか消滅していったのだった。

惑星ラピーヌを発つとき、ブルーはシルバーたちにこぼした。
いくら叩きのめすばかりが正義じゃないといっても、あんな風に悪を倒せる奴はシルバーたちしかいないだろうと。

(つづく)