うさ子戦隊エリザベス

 

ストーリー

第18話「くもりのち晴れ」

自分を呼ぶ声を聞き、目を開ける。目の前には、変身前の自分と同じ姿をしたエネルギー体がいる。それは、レッドと同じ状況だった。しかし、隣にはもう1人いた。
イエローとピンクは同じ光の中にいたのだった。そして、2人はうさ子の姿をしていなかった。

いくら攻撃しても消えないエネルギー体。いつしか2人は、それぞれ相手の分身と戦っていた。今まで正直に言えなかったことを叫ぶひかり。思いつめて1人で墓参りに行く晃司を責め、彼女の代わりになれない自分を責め、先に死んでしまった母親を責め、自分に弱音を吐かない父親までも責めていた。晃司は何も言えなかったが、ひかりの分身がウソをバラしてしまった。
晃司の彼女は生きており、いつも墓参りに行く振りをして、墓地を通り抜けて病院へ見舞いに行っていたのだった。
驚愕するひかりと、否定のできない晃司に、分身が襲い掛かった。

1年ほど前、まだひかりが女装もしていなかった、母親が生きていた頃。道場近くの公園によくバイクに乗った学生が集まっていた。彼らは公園の子供ともよく遊び、近所では知らない者はいないぐらい馴染んでいた。いつからかその中に女性が混じるようになった。それが晃司の彼女…野々山藍だった。ひかりは晃司と藍に憧れを抱いていた。特に藍とは母親と共に3人でお茶を飲んだりするほどの仲になっていた。
しかし突然、母親が倒れてしまった。そのまま意識を取り戻すことなく帰らぬ人となった母親。ひかりは部屋に篭ることが多くなった。あるとき、バイクの存在がうとましくなったひかりが、タイヤに棒を差し込んだりといたずらをしてしまった。その後、部屋で罪悪感と戦っていたところへ、2人が事故に遭ったという知らせが舞い込んできた。自分を責めるひかり。せめて謝りたいと病院を訪ねたのだった。病院の受付で晃司と遭遇したひかりが藍の状況を尋ねると、晃司は黙って首を振るだけだった。その後、ぼうっと街を徘徊することの増えた晃司をみかね、ひかりは自分が立ち直る手本になろうと、道場で母親の代わりを務めることを父親に宣言し、女装をするようになったのだった。そして、道場に入るよう晃司に声をかけ、今に至るのだった。少なくとも、ひかりはそう思っていた。
しかし、それはウソだという。藍が生きている。それなのに、晃司は死んだと言っていた。ひかりには真意が全く理解できなかった。

目を開けた晃司に、ひかりが覆いかぶさっていた。分身の攻撃を背に受けていたのだ。2人分の攻撃を受けたまま抑えながら、本当のことを話してくれと泣き叫ぶひかり。晃司は、少しずつ話しだした。
事故に遭ったのは、二人乗りをさせた自分のせいであり、いたずらは乗る前に気づいていたこと。大型バイクだったし、ヘルメットもかぶらせていたからと慢心していた自分のせいであったと思っていること。藍は意識を失ったままだということ。藍の両親に近づくなと言われたこと。それでも見舞いには行っていること。ひかりに話せば自分も行くと言うだろうし、ひかりの親にも話さなくてはいけなくなる。そうすると必然的に藍の両親にも話が伝わってしまうので、ごまかさなくてはと考えたこと。何より、ひかりのことを考えず、楽な手段を取ってしまったこと。それを藍の友達でもある亜弓にたしなめられていたこと。
すべてを聞いたひかりは、しょうがないんだから、と涙をこぼしながら笑うのだった。そして、晃司の上に、倒れた。晃司はひかりを分身ごと抱きしめ、これ以上大切な存在は失いたくないと立ち上がったのだった。
消える分身。2人の耳にふたたび藍の呼ぶ声が届いたのは、そのときだった。

光から解放され2人の前には、ネイブルの力を借りて意識を取り戻したという藍が立っていた。エネルギーを使い果たしてしまったと言うネイブルの横を通り過ぎ、藍を抱きしめる晃司と、2人に抱きつくひかり。そして亜弓が、やっと元に戻れたなと笑うのだった。

すっかり敵もいなくなったというのに放っとかれ、取り残されてスネる蒼太を見て、嬉しそうだと笑う碧。今、ようやく5人の心がひとつになろうとしていた。

(つづく)