うさ子戦隊エリザベス

 

ストーリー

最終話「ここから始まるプロローグ」

晴天の下、ひらひらしたピンク色のドレスを着た、中学生くらいの少女が走っていた。彼女を呼び止めるのは、その父親。ひかりと呼ばれたその少女、そう、朝倉ひかりは、家に置き忘れていた鞄を手渡され、照れ笑う。そしてふたたび走り出し、商店街へ入るのだった。

商店街の弁当屋、その入り口に碧が立っていた。蒼太を迎えに来たのだ。2人とも学業の次に家の手伝いを優先してきたため、関係は進展していない。それでも、蒼太が恋心というものを理解してきた最近では、用事を作っては行動を共にする機会が増えていた。碧はそれだけでも幸せだと思っていた。兄弟のいない2人にとって、家を継ぐかどうかは大切なことだが、それを決めるにはまだ早い。あと少しだけ、何も考えずに過ごしたいと願う碧だった。

店から出てきた蒼太は、すっかり大人になってしまった碧をまぶしそうに見ていた。しかし、進学や就職、家を継ぐかどうかを考えては自分の無力に悩んでいた蒼太に、好きなように生きたらいいと言う両親を思い出し、こっそり拳を握りしめ、がんばろうと誓うのだった。

2人が着いたのは、いつものバー。店の前には掃き掃除をする亜弓がいた。亜弓は、店を辞める日までマスターとしか呼ばせなかった蘇芳菊子の代わりに、未だにネイブルとしか呼ばせない華田桔梗と共に店を譲り受けていた。もちろんヴァイオレットこと妹のすみれも一緒なのだが、最近では素直じゃない2人のフォローを諦め、託児所で働くようになっていたのだった。今日はすみれも店に来ているらしい。

店を譲ってからも近所の実家に住んでいる菊子が、ひかりと共に到着した。晃司と藍はもう中にいるはずだと言うひかりの前に、二足歩行のウサギのような姿をした3人組が現れた。
シルバーことユキ、ワイティことマシロ、そしてオレンジ。3人は服を着る習慣が無いながらも着飾っていた。今でも通信機を通じてやりとりを続けているため、何年も会っていないとは思えない盛り上がりを見せる4人。菊子はやや遠巻きにそれを見ていた。ふと、ひとつ疑問をいだく。ひかりはいつまで女装をするのだろう、と。いくら魔女っ子が好きだからって、いつまでも女装をしているわけにもいくまい。考えていてもしょうがないと、質問をぶつける菊子。ひかりは、もうあと数年もしないうちに女装をやめることを父親と約束していたが、今日限りでやめようと思っていることを話した。だって、今日は。

バーのドアが開き、蒼太がひかりたちを呼ぶ。主役が待ちくたびれてしまう、と笑う。
中に入ると、晃司と藍が照れくさそうに、そして幸せそうに笑っていた。藍は手製のウェディングドレスを着ていた。晃司は普通のスーツだったが、それがまた2人らしかった。
祝宴は長い間盛り上がっていた。

そろそろ解散かという頃、ひかりが変身アイテムを返そうと言い出した。驚くうさ子3人だったが、変身自体していないし、これ以上かかわりを持っていてはいけないのかもしれないと思い直した。ラピーヌ復興のために頑張っているあいだ、通信は心の支えになったと涙を浮かべ礼を言う3人。思わずもらい泣きしてしまう者あり、こらえる者ありといった中、ひかりは笑顔でいつかこちらから会いに行くと言うのだった。
3人が飛び立ってから泣き出してしまったひかりは、宇宙船が見えなくなっても、ずっと手を振り続けていた。

「またいつか、会える日まで」
3人の声が聞こえたような気がした。

(おわり)